私たちのベーコンは、脂身の微細な熟成変化に注目を集めるとともに、その研究と長い時間を費やしてきました。ところが、それまで美味の源とされてきた脂身が、今度開発した「ベーコン節®︎」においては味を損なう存在になってしまったのです。
脂身を乾燥させると酸化が進行し、その酸化脂肪がエグミや苦味を引き起こすだけでなく、時と場合によっては健康への悪影響さえも及ぼすとされています。私たちもその点について頭を悩ませていました。
かつお節は、脂肪を極力除去した状態で調理されています。
しかし、ベーコンの特徴である脂肪を完全に取り除くと、その味はどうなるのでしょうか?この疑問はある時、私たちの一人が”ハムとベーコンの違い”に思い至るまで続きました。
ハムとベーコンの主な違いは、最終的な調理過程に蒸す(または茹でる)工程が含まれるかどうかです。特定の部位を使うわけではなく、ロース肉でもベーコンを作れるし、もも肉を使ってもハムを作ることができます。
そこで、私たちは脂肪の多いバラ肉を使うのではなく、脂肪が少ないもも肉やフィレ肉で調理を始めることにしました。しかしながら、完全に脂を取り除くというのは現実的には困難で、1kgあった肉が調理前には7割にまで減ってしまいます。
その後、一ヶ月間の氷温熟成を経て、燻製時間をさらに延ばしました。更にその後、熟成室で3ヶ月待つことにより、ついに完成します。この間、定期的に状態を確認しながら熟成を進めます。
2022年の春、原料を調達してから4ヶ月経ったとき、初めて試食を行いました。その瞬間、私たちはみんなで「これは本当に美味しい」と目を見合わせました。サラダにトッピング、パスタにトッピング、卵かけご飯にトッピング、お蕎麦にトッピング…全てが驚くほど美味しかった。これは他ならぬ可能性の塊だと、私たちは確信しました。
(余談ですが、出来上がり量は、10kgの原料から、わずか1/4の2.5Kgしかできません。)
その年の秋、スペイン・バスク地方から星付きの一流シェフ一行が北海道に訪れました。そこで、試しに「ベーコン節®︎」を彼らに試食してもらいました。彼らは驚き、「これは何だ?」と私たちに尋ねてきました。『これは、ベーコンのような鰹節、いわゆる「ベーコン節®︎」だ』と説明すると、「どうやって作るのか」を尋ねてきました。その場のノリで「スペインでも作れますよ」と冗談交じりに答えると、彼らは真剣な顔で「ぜひ作ってほしい」と言いました。この瞬間、私たちは日本国内だけでなく、海外への展開の可能性を感じることができたのでした。
気づけば、最初の取り組みから5年もの歳月が流れていました。
現在、「ベーコン節®︎」については、多くの反響をいただいております。「どうすれば買えるのか」「いつからお店で販売されるのか」「飲食店で使いたいのですが、どうすればいいのか」など、問い合わせが日々寄せられています。その一方で、現在の製造ラインでは月産15kgが限界で、どのように製造量を増やすべきかが最大の課題となっています。